では、プラトン立体を量子幾何学によって構造転換していきましょう。ここからは本格的に幾何学的構造を扱う段階に入るため、プラトン立体も幾何学の正式名称である「正多面体」と表記します。
量子幾何学には先に挙げた5つのルールがあります。その中で構造を構築するために必要なのは、第1章で触れた「虚空間」の概念を除く以下の3つです。
クオークを本幾何学の構成要素とし、線状もしくは軸状に認識したものを「クオーク線」または「クオーク軸」と呼ぶ。線が太くなり立体状に変容したものは「クオーク体」と呼ぶ。
クオークの交差箇所において、クオーク同士が交わって一体化することはない。また、交差は最小3本の軸で構成する。
各クオーク軸は、必ず互い違いに交差する格子構造を形成し、互いに引き寄せ合う。
以上のルールにのっとり、最もシンプルな段階から考えてみましょう。正多面体の中で最も面数の少ない「正四面体」を用います。
正四面体を構成する正三角形の面は4枚あります。正三角形の辺は3本ずつありますが、各辺は隣り合う三角形と共有されるため、全体で6本となります(図7上部参照)。
この辺をクオーク線とみなし、それぞれの辺が交わって一体化することなく立体的に交差し、かつ互い違いに組み合う規則性を持たせて構成します。線で描くと交差箇所が「点」に見えてしまうため、軸を太くした立体的な状態(図7下部参照)でこれを示します。
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| 【図7:正四面体のフレーム構造からクオーク軸構造への変換】 |
ルール2に従い、軸の交差部において2つの軸は交差して一体化せず、互いに引き寄せ合う関係となります。ここで重要なのは、交差部における軸の上下関係(重ね順)を統一することです。1箇所でも上下関係が逆転していれば、引き寄せ合う力のバランスが崩れ、正常な三角形の格子を形成できなくなり、構造として自立しません。
各軸が互い違いに網目のごとく交差することで、軸の格子は中央に三角形の「虚空間」を形成します。見方を変えれば、虚空間が形成されることでそこに「渦」が発生し、軸同士を引き寄せているとも言えます。なお、軸の上下の交差パターンを反転させることで、虚空間には右回り・左回りという2種類の「渦」を生み出すことができます(図8参照)。構造上の強度としてはどちらを選択しても問題ありません。
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| 【図8:交差の上下関係と虚空間に生じる渦の向き】 |
ユークリッド幾何学において、多面体の各頂点は複数の稜線が1点で交わる場所ですが、量子幾何学においては「点」が存在する代わりに「虚空間」が存在します。図9は、正四面体の頂点に対応する軸の交差部を拡大したものです。そこには小さな三角形の「虚空間」が確かに形成されていることがわかります。
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| 【図9:交差部に生じる三角形の虚空間】 |
本来、量子世界の観点から見れば、クオークは円環状に循環するリング状のエネルギー流として捉える方が自然です。
そこでまず、円環を用いた構造模型である「リングユニット(※1)」を見てみましょう(図10参照)。正四面体に対応させるため、6つの円環が中心部で交差し、それぞれの円環の一部が正四面体の稜線に該当する役割を果たしています。
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| 【図10:円環を互い違いに組んだクオークの流れを示すリングユニット】 |
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【図11:図10における正四面体対応の交差箇所を抽出した構造】 |
すなわち、一見すると曲線である円環も、ミクロな視点へとフォーカスを深めていけば、局所的には「直線」へと近づいていくのです。この円環と直線の関係は、身近な「水平線」を思い浮かべるとより理解しやすいでしょう。目の前に広がる水平線は真っ直ぐな直線に見えますが、視点をマクロに広げれば地球が球体であるため、実際には巨大な円環の一部です。
つまり「直線軸」とは、クオークが描く円環状の流れの一部分を抽出し、ベクトルとして捉え直したものにほかなりません。したがって、この構造の本質は部材の「見た目の形状(直線か曲線か)」にあるのではなく、「互いに織りなす交差の関係性」そのものにあるのです。
ちなみに、この「関係性の不変性」は、部材が紐状であっても全く同様に成立します(図12参照)。
さらに、本著で構成要素として直線軸を選択した最たる理由は、本書の究極の目的にあります。それは、ミクロな量子幾何学の原理を、マクロな実体ある「建築構造」へと技術転換・応用することです。現実の構造物として組み上げる際、幾何学要素としては直線軸を用いることが最も強靭であり、施工・実用・構造解析的にも極めて合理的だからです。
今後、このように直線軸で構成された多面体対応の軸組み構造を「多軸体(Polyaxial Structures)」と呼び、特に正多面体に対応するものを「正多軸体(Regular Polyaxial Structures)」と定義します。
それでは、残る4つの正多面体も同様に多軸体へと変換していきましょう。正四面体と同じく、各立体の稜線を軸に置き換え、軸の交差部を互い違いの規則性で統一して構造を形成していきます。
視覚的には、軸が細くなるほど面の印象に近づくため、軸の交差関係が明確に判別できる太さに調整した状態を図13に示します。
正六面体(立方体)に対応する多軸体を「正六軸体」と呼びます。面体の頂点に対応する4本の軸が交差する箇所には、三角形の「虚空間」が生じています。同様に、正八面体に対応する「正八軸体」には四角形の虚空間が、正十二面体に対応する「正十二軸体」には三角形の虚空間が、そして正二十面体に対応する「正二十軸体」には五角形の虚空間が生じていることが確認できます。
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| 【図13:各正多面体に対応する正多軸体の一覧】 |
これらの「虚空間」が形成されることで、ある重要な構造的仕組みが見えてきます。その仕組みは、従来の正多面体の「面」による構成では視覚的に認識することが困難ですが、多軸体の「軸と虚空間」に置き換えることで一気に明瞭になります。
次章では、この多軸体が秘める構造的仕組みについて、具体的に紐解いていくことにしましょう。






