9/07/2026

テンセグリティの構造原理  第八章 多軸体の核構造 (虚空間)を抽出する

 3つのニュートラル(N)正多軸体には、共通する規則性があります。図25を参照しながら説明していきましょう。

各軸体には、複数の軸が平行に配列しています。N正六軸体では2本、N正十二軸体では3本、N正三十軸体では5本の軸が、それぞれ平行に並んでいることが分かります。図中の矢印はこれらの平行軸のベクトルを示しており、これが軸体の中心を通る一つの「座標軸」を形成しています。 さらに、視点を変えて観察していくと、同様の座標軸が複数交差していることにお気づきになるでしょう。
【図25:ニュートラル正多軸体における一座標軸】
N正六軸体の場合、2本の平行軸の組が3つあり、全体として3本の座標軸で構成されていることが容易に見て取れます。 N正十二軸体の場合は、3本の平行軸の組が4つ存在します。図中の軸の切断面を追っていくと、2組は簡単に見つけられるはずです。残りの組は切断面が視点からずれているため判別しにくいものの、全体で4組の平行軸があり、それらが示すベクトルは軸体の中心を通る4本の座標軸を形成しています。 N正三十軸体に至っては、この斜視図から全体の構成を把握するのは難しく、たとえ実物が手元にあったとしても、すべてのベクトルを正確に読み取るのは困難を極めるでしょう。 実際には、5本の平行軸の組が6方向に存在しており、それらが軸体の中心を通る6本の座標軸を形成しています。

軸の構成数が増えるほど構造は一見複雑に見え、ベクトルの読み取りも難しくなりますが、これらの規則性はすべて、軸体が内包する「核構造」に由来しています。以下、段階を追ってその実態を観察していくことで、理解がより深まるはずです。

次の段階として、軸の形状を変容させ、軸体を「充填」していきます。 これは、隙間のある軸組を密実な構造へと変え、内部の虚空間(隙間)を圧縮して閉じ込めることで、軸体の原型ともいえる核構造を浮かび上がらせるためです。

まずは、軸の充填化について図26を参照しながら説明しましょう。 図26(上段)は、各多軸体を座標軸の方向から見た平面図です。元の軸の断面は円形であるため、隣接・交差する他の軸との間には隙間が生じています。この隙間を埋めるべく、軸の断面形状を四角形や三角形へと変形させます。この操作をすべての軸に対して行うことで、軸体の外観は同図(下段)のように変容し、内部の隙間が完全に埋め尽くされ
ます。
【図26:軸形状の変容による軸体の充填】

ただし、平面図だけでは全容を把握しにくいため、立体的な外観がより分かりやすいよう、図27(上段)に斜視図を示します。

これを見ると、多軸体の内部が完全に密閉状態になっていることが分かります。結果として、多軸体は内部の虚空間(核構造)を包み込む「外殻」となり、同時にその核構造をかたどる「雌型(モールド)」の役割を果たすことになります。

【図27:充填された軸体の展開】


それでは、雌型となった軸体を分解し、内部の核構造を取り出して観察してみましょう。図27(下段)がその状態を示しています。内部には、核構造として「ある種の多面体」が隙間なく収まっていたことが分かります。それは正方形や菱形で構成された多面体です。 N正多軸体の規則性を生み出してきた核構造である以上、これらの多面体にも当然、独自の規則性が潜んでいるはずです。

次章では、この規則性に合致する多面体を具体的に提示し、その特性について詳しく解説していきます。
この多面体こそが、テンセグリティ構造を形成するための「鍵」となる重要な要素です。この形体から導き出される多軸体によって論理的なテンセグリティ設計が可能となり、その特性を活用することで、造形の自由度は無限大に広がっていきます。 言わば、この核構造の発見こそが、新たなテンセグリティへの「突破口」となるのです。