様式とは、先にも述べたように人間で言うところの皮膚や外観、場合によっては文化的に異なれば衣装にたとえることができる。ここでの構造は骨格といえよう。
すなわち、建築を支える骨格が構造といえる。
そこで、この構造から分類していこう。
先ず、第一の構造はレンガ積みの構築方法で材料は限定しない。石であろうと土の塊であろうと氷の塊であろうと。
この観点からは、文化的・技術的な高度差は度外視される。すなわち、エスキモーの氷のドームもイスタンブールのアヤ・ソフィアもローマののパルテノンも同じ構造原理に基づいて出来上がっている。
第二の構造は、この積み上げるというよりはむしろ、組み立てるパターンである。近代の建築はこの手の構造が多い。産業革命と鉄時代以降、その構造は鉄骨を繋ぎ合わせてフレーム(平面)を作ることから始まっている。
このフレームが立方体であろうとトラスであろうとその形態は問題ではない、幾何学的観点からはむしろその接合部の施しに注目すべきである。
第二の構造では、フレームの平面を繋ぎ合わせて立体と成す。その後のパネルやコンクリートの流し込み、ウェット・ドライといった工法は2時的・3次的な要素である。
正確に言えば、要点はその接合がユークリッド幾何学の観点から成り立っている点である。
具体的にいうと、その接合の核が座標軸の中点を示しており、各座標軸がフレームの材となる。
通常の座標軸構成は、直行3座軸が一般的である。すなわち建築物にしてみれば直方体の組み合わせの形態となる。
しかし、この座標軸構成が任意の角度に交差する場合はどうなるだろう。それに加えて3本以上の軸構成となればどうなるのであろう。
その形態はより自由度の高いものになることが直感として分かるだろうか。
1960年代前後の建築でそれが出てきた。代表的なのはR.B.Fullerの考案したジオデシックドームだ。しかし、それ以外にもこの時代には建築の様々な試みが行なわれた。
今日多面体の研究が進み、既に建築ではこの手の発想による建築は出尽くされたといわれている。
そのとおり。多面体を従来の幾何学の発想で展開するには今の時代では限界ではないだろうか。少なくとも、新たな開拓者精神を望む者にとってはである。
ここで幾何学的な解釈で避けて通れない点はある。それによってより理解が促されるからだ。
しかし、むしろ筆者は直感的な理解を促して行きたいと考えている。幾何学的な解釈は実は非常に直感に働きかけるもので、それが簡単に分かり合えるものと筆者は判断している。
そこで、第三の構造に急ぎ入って行きたい。
その構造の初段階は極めて原始的な発想から成り立つだ。
これといった道具が発達していなかった時代、人は軸と軸を繋ぐため、今日のように穴を開けてボルトを通したり、「ほぞ」や「溝」など作ることができなかった。ほとんど、材料はロープで縛りつけるしかなかった。あるいは軸が竹の様に細くしなやかならば編むといったほうが良いだろう。
ここでは前者のように軸の接合における発想がまったく異なっている。幾何学的には軸や材を線としてとらえた場合、線同士互いに交わっていない。もう少しこの線に太さを持たせれば分かるだろうか。
現実的に軸同士がその端部を共有することはないのだ。あくまでも材同士ずれている。このずれがあるからこそ、当然だが繊維状の構造を形成する。
その代わり、数本の太い材が一極に集中して接合するようなことは困難だ。
例えれば、傘の骨の集中する箇所を形成するのは苦手だ。それに繊維が一箇所で玉になっては作業にならない。
建築に置き換えると、あの蛸の足のようなコネクタ(メロシステムジョイント)はありえない。
幾何的には、一極集中型が分散型に置き換えられるといったほうが適切だろう。
この点、トランスフォームするといった感じだろう。中心は中空状の空間となり、その周りを軸が交差して重なる。
といっても立体は想像しがたい。そのため、次に一旦平面的な段階に戻ってこの構造の原理について掘り下げてみよう。