3/01/2010

テンセグリティー その4

テンセグリティーとプラトン立体



プラトン立体(正多面体)は、一見単純そうに見えるのですが、
奥が深く、派生する立体を理解し、本質的に使いこなすにはかなり年季がいるものです。
またこの立体の幾何学的考察は、自然科学や芸術、はては精神世界の分野にまで登場し、神聖幾何学という名称を付けられています。

では、一旦前回説明した領域に立ち戻ってみましょう。
テンセグリティーをこのプラトン立体で掘り下げてみようと思います。
そうすることで、ある規則性が現われ、その規則性が他の要素と結びつくところまで展開できればと考えています。
これによって新たなデザインの領域が見えてくることを望んでいます。

プラトン立体は5つありますが、それはユークリッド幾何の見方によるものです。
テンセグリティーはの見方によれば、プラトン立体は実際、三つに集約されます。その点は段階を踏んで触れることにしましょう。

とりわけ現時点では大切な目標をを絞っていこうと考えています。
それは、テンセグリティーによってユークリッド幾何学の呪縛から開放されることです。


最初のテンセグリティーは軸材が6本によるものです。
前々回でも扱いましたが正4面体に対応するものです。
これはいたって簡単に識別できます。正4面体をなす辺は6本です。
その辺を軸材にして、空間上を互いにずらしていけばこのような軸の構成となり、現実的に見せようとすれば針材で相互に結びつける事でこのようなテンセグリティーとなります。




次は軸材が12本からなるものです。正6面体もしくは正8面体に対応するものといわれています。
正6面体をなす辺は12本、先と同様に辺を抽出して空間上で回転するようにずらしていけばこのようなテンセグリティーとなります。
しかし正8面体をなす辺も12本で、同様にずらしていくとこのよなテンセグリティーになります。
もちろんその際に、線材の長さはそのつど変化します。



ここでプラトン立体の双対関係をご存知の方ならば、おおよそ直感で気付いたかも知れません。
テンセグリティーは、双対関係にある2つの立体の間に無数に存在しているゆらぎのような状態です。

3番目の軸材30本からなるテンセグリティーも同様です。
正12面体正20面体の間を行ったり来たりする状態を示しています。



5角形を形成する空間を可能な限り広げることで正12面体に近づき、逆に5角形を限りなく小さくすることで正20面体に近づきます。



最初に示した正4面体は自分自身で双対関係にあります。
ピラミッドの上下をひっくり返した2つの体がよくその図で示されていますが、何か神聖幾何学でいうところのメタトロンとかいう状態を示しています。


テンセグリティーの出現まで、プラトン立体には示すことのできない形が長い間封印されてきたといってもよいでしょう。
この点は、ユークリッド幾何学の限界が露出しており、時代が徐々に本質的な形態の探究に向ってきた現われだと思います。 私が学生のころ(1980年代初頭)はまだ、テンセグリティーの存在を知りませんでしたが、彫刻を学んでいたこともあって、ロシア構成主義のナウム・ガボあたりにかなり影響を受けました。

この人の作品には、かなりユークリッド幾何に対して戦いを挑んできた跡がうかがえます。非ユークリッド幾何学の誕生したお国がらでしょうか。


余談になりましたが、次回は本日述べた”ゆらぎ”を追っていこうと思います。
その中での重要な位置があり、それを示していこうと思います。
その位置が、テンセグリティーのまた別の展開を見せることになります。

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