7/27/2023

古代コンクリーたたきⅤ

4層目を仕上げ、これで 全ての作業が完了

最後の層はその表面をどう 仕上げるかで考えあぐねていた。
最初はコテ仕上げで表面を均一になしていたが、作業が中盤に差し掛かったところで、 おかしいことに気づいた。
コテでモルタルのように均ならしていくと表面に微粒子のペーストが集まり見た目は綺麗に仕上がるが、モルタルではないために 後々は劣化が早くなることに気づいた。
生石灰と 種土の割合が1対15だからである。
どうしても 表面処理をきれいに コテ仕上げにしたいならば、モルタル仕様の1対 3にしなければならない。
ここで『たたき』の重要性について気づいた。
表面を均一にするには 、とにかく コテで叩くことである。
ところどころ スが入った場合は、小さなコテでその箇所に種土を盛り、叩く。
土を盛りすぎた場合は、コテで均らさずに削り取り、叩く。
コテはモルタルのように 傾けながら 表面を均すようなことはしてはいけない。
1体15の比率の場合はとにかく 叩いて 叩いて表面を均一に持っていく。
その場合 、コテの跡が残ってしまうことがある。これは自作の木コテを使って叩いたからで、このようなコテは表面のたたきには向いてないことがわかった。
やはり『たたき』 専用の 金鏝 はよく考えられて作られている。そうでなければ作業効率は悪くなる。
今回は金ゴテでも大型の薄物で叩きながら なんとか 表面を均一に持って行ったが、かなり時間がかかった。
最後の微妙な表面の凸凹を均すには、ハケ仕上げが適している。
あるいは スポンジで仕上げても良い。







7/22/2023

古代コンクリートの再現Ⅳ

3層目の完了

生石灰 と 種土の割合 を1:10では硬すぎるような気がし、1:15に変えてみる。
1:10は長七の『人造石 』でも堤防の組石の間に詰め込む 場合の比率ではないだろうか。
床に施工する 『たたき』程度ならば1:15でも十分な強度を保つことができる。
練り具合は握った時に形が保て、水が滴り落ちないで、じんわりと湿り気が感じる程度が良い。
従来のコンクリート 同様に、なるべく 水分を押さえて、叩いた時に じんわりと水が上に上がってくる程度が一番強度が出る。
従来の『たたき』の場合、 ダンパー や重みのあるコテで叩いていくが、おおよそ3 cm 厚 を3から4層に分けて叩いていく。
古代コンクリートを使った場合は 10cm も取らなくても7cm 場合によっては6cmぐらいで十分強度が保てるのではないだろうかと予測している。
叩くと じんわりと水分が浮き上がってくる程度がよく、できればその直後に次の層に取り掛かることが好ましい。
なかなか そのように事が進まないことが多いので、乾かないように散水し、気温が高い場合は シートをかぶせながら行う。
施工する場合は 季節も考慮しなければならない。
夏場や 冬の 水が凍るような時期は避けるべきである。
これは 水を媒体にして化学変化を起こすことで硬化する材料一般について言えることで、化学変化が完了する前に水分が飛んでしまうと、 あるいは凍ってしまうと粒子の結合 がなされずに固まらないで後々崩れたり 亀裂が入ってしまうことになる。
よって施工するに最適の時期は秋の季節のいい時もしくは梅雨時の湿度の高い時期となる。
今回は 梅雨時から始まり 梅雨が終わる頃にはちょうど 施工も終わる予定であったが、何かと試行錯誤や材料調達に時間が重なり厳しい 夏の最中に行わなければならないハメになってしまった。








7/20/2023

古代ローマ時代のコンクリートは、今も強度を増していた──その驚くべき理由が解明される

 コンクリートは、年月が経つにつれてもろくなるのが普通だ。だが、古代ローマ時代に作られた岸壁のコンクリートは、時間が経てば経つほど強度を増していた。その驚きの理由が、米研究チームによって解明された。https://wired.jp/2017/07/30/roman-concrete/

以下、全文転載
古代ローマ時代のコンクリートは、今も強度を増していた──その驚くべき理由が解明される

調査が行われているのは、イタリアのオルベテッロにあるポルトゥス・コサヌスの岸壁。
PHOTOGRAPH BY J.P. OLESON

古代ローマ帝国が滅亡したのは1,500年以上も前のことだ。だが、この時代に作られたコンクリートは、現在も十分強度がある。例えば、ローマにあるパンテオンは無筋コンクリートでできた世界最大のドームといわれているが、約2,000年経った今も強度を保っている。これは現代のコンクリートでは考えられないことだ(現在のコンクリートの寿命は、50年から100年程度とされる)。

なぜ、ここまで古代ローマのコンクリートが強いのか。その謎が解明されつつある。

古代ローマ時代のコンクリートは、火山灰、石灰、火山岩(軽石)、海水を混ぜ合わせて作られている。のうち、重要な役割を果たしているのが、最後の材料である海水だ。この珍しい材料の組み合わせのおかげで、1,000年以上の時間をかけてコンクリート内で新しい鉱物が形成され、ますます強度を増しているらしい。


その秘密を解明するため、米エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所の研究チームは、古代ローマ時代に作られた岸壁や防波堤のコンクリートを採取して、X線マイクロ解析を行った。

『American Mineralogist』誌オンライン版に2017年7月3日付けで掲載された研究成果によると、解析の結果、コンクリートの中にアルミナ質のトバモライト結晶が含まれていることがわかった。この層状鉱物が、長い時間をかけてコンクリートの強度を高めるのに重要な役割を果たしているという。この鉱物は、海水と石灰と火山灰が混ざり合って熱が発生することによって生成される

この研究を率いたユタ大学の地質学者マリー・ジャクソンは、「古代ローマ人は、海水と化学反応を起こして成長する岩のようなコンクリートをつくり出しました」と言う。また、この構造物に打ち寄せる海水が第2期の鉱物の成長を引き起こし、コンクリート全体の強度をさらに高めたことも、解析から明らかになった。

鉱物粒子を分析した結果、コンクリート全体でトバモライト結晶が成長していることが確認された。しかも、この成長はたいてい、フィリップサイトと呼ばれる別の結晶の成長と同時に起こっているという。こうした新しい鉱物は、火山灰が海水によって溶解したときに形成される。長い時間をかけて海水が火山灰を溶かすにつれて、コンクリートはどんどん強度を増していったのだ。

これに対し、現代のコンクリートは、いったん固められた後にその構造が変化するようにはつくられていない。そのため、鉱物によって成長する古代ローマ時代のコンクリートと違い、私たちが今日利用しているコンクリートは、なんらかの化学反応が起こると、裂けたり割れたりしてしまう。とりわけ、海水は現在の防波堤にとって脅威となっている。補強鋼が錆び、その周りのコンクリートが腐食してしまうからだ。

古代ローマ人は、幸運にも理想的な岩壁を作成することができた。そこでジャクソンは、現代科学の力を借りてこのコンクリート混合物を再現したいと考えている。

※古代ローマで使われていたコンクリート(ローマン・コンクリート)の研究をもとに、コンクリートの結晶に「螺旋転位」と呼ばれる“欠陥”を意図的につくると強度が2倍に高まるという研究結果も発表されている。なお、米軍は通常のコンクリートよりはるかに強度があり耐久性もあるスーパー・コンクリート(ジオポリマー)の研究を進めているが、大ピラミッドの石も同種の技術で作られていたという説もある[日本語版記事]。

TEXT BY JAMES TEMPERTON
TRANSLATION BY TAKU SATO, HIROKO GOHARA/GALILEO


合わせ読んでおきたい

古代ローマの建物はなぜ長持ちするのか、科学者が謎を解明



古代セメントの固まるメカニズム

 【海水からセメントを取り出し包丁を作る】

“the sharpest seawater knife” as if there are literally any other seawater knives in existence
https://youtu.be/pFG-nXUw6Ts
文字起こし


 古代エジプト・ローマでも使われ数千年来建造物を保ってきた古代セメント、現代ではその製法は伝承が途絶え、ジオポリマーとして研究されてはいるが民間人でも使えるような画期的な製法は見つかっていない。
タルタリア文明崩壊以降、この技術を使う石工集団や文献・証拠は抹消され、それに代わって寿命の短いセメントが発明されて現代に至っている。

私はこの5年ほど古代セメント・古代コンクリートを研究・調査してきているが、今回この動画で調合された方法で古代セメントや古代コンクリートは作られたのだろうと確信を得ている。

日本でも人造セメントとしては三和(たたき)が知られている。
粘土と海水(にがりであるマグネシウム)と石灰または焼いた貝殻(カルシウム)この三つの要素がかなめである。
さらに、これはほとんど技法として知られていないが、より寿命を長く強固にし塩害にも強く護岸工事にも使われてきた人造石を作る技術もあった。

だが、その技法は現代のセメント(ポルトランドセメント)の登場によって忘れ去られてきたかのように文献では書かれている。

私が勘ぐるには、生産にエネルギーコストが少なくて済む古代セメントなど必要とせづ、寿命の短いサイクルで消費される建造物、ひいては都市を計画していた組織的な存在によって、この古代セメントの技術は抹消されてきたのではないだろうか。
いわゆるタルタリア文明を崩壊させてきた存在たちによるものではないだろうか。





【酸化マグネシウムの精製過程】
酸化マグネシウムは、海水と石灰石から作られた天然由来の成分から作られています。以下の製造工程の通り、人体に有害な成分や化学物質は使用していない。



石灰石(CaCO3)を高温で加熱して、生石灰(CaO)を得ます。
CaCO3 → CaO+CO2

ここで生じた生石灰に真水をくぐらせることで、消石灰[Ca(OH2)]が生じます。
CaO + H2O → Ca(OH)2


消石灰に海水を混ぜることで、イオン交換反応により水酸化マグネシウム【Mg(OH)2】を生成。
Ca(OH)2 + Mg2+(海水) → Mg(OH)2 + Ca2+


生じた水酸化マグネシウムには海水由来のNa+,Cl-が多数付着しているため、洗浄した後、乾燥させることで酸化マグネシウム(MgO)が作られます。
Mg(OH)2 → MgO + H2O

この動画では、この酸化マグネシウムに塩化マグネシウムを混ぜて乾かせ、フライパンより固い素材を作り出している。

【参考資料】
長七たたき (人造石)物語 ~服部長七という人間像と人造石が固まる謎~
以下、要所転載
第2章 人造石が固まるメカニズム1 長七たたき (人造石)とは
  「たたき」は、江戸時代から土間や井筒、流し場などで古くから用いられていたものです。「たたき」は小石の混ざった土と石灰、にがりを混ぜ叩いて固めることから「たたき」とか3つの材料を混ぜことから「三和土」ともいいます。
  特に愛知県三河地方から西日本でよく利用されました。これは、この地域では花崗岩が風化した土「サバ土、マサ土」が手に入り安かったからと考えられます。

2 たたきが固まるメカニズム(出典:INAX 基礎研究所)
(株)INAX基礎研所のX線回折では、構成相は石英、長石、雲母、カルサイト(炭酸塩鉱物)であると確認されました。この石英、長石、雲母は、たたきの主原料である風化花崗岩によるもので、たたきの化学組成から主成分はSiO2、Al2O3で、約7%のCaOを含まれており、消石灰に換算すると約10%に相当することになります。
しかし、文献に多く見られる長七たたきの調合では30%程度の消石灰を混合すると記録されておりますが、今回のたたき含有量測定値は2.76%であったと報告されています。
長七たたき化学組成(蛍光X線回折 重量%)
SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO K2O Na2O TiO2 L.O.I
62.3 15.1 1.0 6.8 0.4 4.7 1.3 0.1 8.4

X線回折ではカルシウム化合物としてカルサイトのみが確認されており、全CO2がカルサイト中にあるとして仮定すると7%のCaO量のうち約50%がカルサイトとして存在することになる。しかし残りのCaOはどのような状態で存在するかは明らかにできませんでした。一つの可能性として、風化花崗岩と添加した消石灰が反応しケイ酸カルシウム水和物等が生成したことが考えられています。
その他にたたきの微構造から固化機構を検討するために、細孔径分布と偏向顕微鏡及び走査電子顕微鏡観察を行った結果、真土(マサ土)と消石灰と水を練り混ぜ十分締め固めたものと確認されました。

              水和反応    炭酸化反応 
Al源(粘土鉱物)花崗岩風化物+Ca(OH)2→CaCO3+H2O
CaCO3+ Ca(OH)2→CaO+CO2
CaO+ H2O→Ca(OH)2


7/19/2023

長七の人造石工法の研究資料

以下の研究資料から長七の人造石工法の重要な点を抜粋する。

天野武弘著

・練り土(種土と石灰に水を加え練ったもの)は、十分たたき締めたとき表面に水がしみ出す程度がよい。
・練り土では海水を用いることが少なくない。実験の結果、人造石を海水中に使用する場合は海水で練った方がよい。
・人造石の築造方法は、練り土の厚さおよそ1寸(約3cm)ごとに締め木で打ち締め、水分がしみ出したら次の練り土を蒔き足して同様に打ち締める。


見直されるその現代的意義
飯塚一雄著 より一部転載


入念に「たたき締める」施工法

人造石工法は,材料の面で強い地域性があった.一口にマサといっても,採取する土地によって組成や粒度が異なる.また,マサが得られない場所では,適当な粘土や火山灰土などを使う場合があったようである・そのような材料の差異や工事条件の違いに応じて,施工の方法も変えていく必要がある.愛知県土木部や名古屋港管理組合のように,人造石工法を標準化しようとする試みもあったが,総じてこのたたき技術に経験的な性格が濃かったのは,材料面の地域差や不均一性におもな理由があったと思われる,したがってその内容は,指揮をとる練梁たちの「秘伝」とされることも多かった.服部長七の場合のように,服部組という大きな組織を持ち,大工事をつぎつぎにこなしていても,なおそこには属入的な性格が濃厚であった, たたき材料の配合比率については,残っている記録が極めて少ないが,各種の史料・文献から,つぎのような重量比の例を拾うことができる. O宇品築港工事(明治!7~22年)          石灰18%,種土82% O神野新田干拓工事(明治26~28年)          石灰約30%,種土約70% ○明治用水頭首工工事(明治34年)          石灰1 対 種土!0 0名古屋港管理組合による配合例          石灰1 対 種土10~12 以上の例における種土には,すべてマサが用いられている・人造石の技法が安定してきた明治後期には,石灰とマサの配合比率は,ほぽ!対10のあたりに落着いていることが読みとれるだろう. 入造石の施工に当たっては,原土の選定と精選(粒度調整など),石灰との配合比率と混合(空練り),加える水の量と練り合わせなど,多くの留意点があるが,最も重要なコツは練り土の打ち込みにあった。練り土                      きだこを少しずつ足しては締め木でたたき締め,さらに木蛸 つきぼうや椙棒で打ち締めることを繰り返して,総体的によく安全 工学伝統の天然セメント“たたき”493圧縮した.この打ち込みの入念さは,伝統的なたたきの経験に基づいているのだが,きわめて日本的な特徴を感じさせるものであり,当然ながら多くの人手を必要とした, このように人手のかかることが,やがてコンクリートに押されていく1つの理由にもなった,最近になって,たたきを復元しようとする試みが見られるが,その最大のネックも,この人海戦術にあるようだ.


天野武弘

7/16/2023

古代コンクリートたたきⅢ

 サバ 土が届いてようやく古代コンクリートによる『たたき』が始まる。



『長七たたき』の資料によれば、
石灰と種土の配分比率は1対10に落ち着いている。
この情報は当時仕事に関わっていた職人が漏らしたのかどうかは分からないが、嘘は言っていないと思う。
ただし 本当のことも言っていない。
石灰は大別すると生石灰と消石灰に 分けられるが、もしそれが消石灰 だとしたら長七が言っていた人造石などのような硬さは絶対に得られない。港湾の堤防 など 論外である。
また 石灰に混ぜる 種土は 真砂土 (サバ土)になるわけだが、その成分はおおよそ 花崗岩の風化した粒子や鉄分を含んだ 粘土 である。
たとえ長七が生石灰を使っていたとしても人造石となる化学反応を起こすようには到底思えない。
となると 長七はこの種土に何かを加えていたに違いない。
経験からそれを発見したか 、あるいは 当時ローマン コンクリートの情報をどこからか得ていたかもしれない。

いずれにせよ、それ以前から火山灰は左官業で壁土に使われていたのだから長七がこれを試していたことは確かだろう。


古代コンクリートの方は火山灰を媒介にするが、 すでに先人が行った実施例を見ると生石灰 との比率は1対1から1対2に落ち着いているようだ。
前回は1対1.5にしたが 今回は1対2で試すことにした。
よって 今回の配分比率は長七の資料を参考に生石灰1に対して種土となる火山灰2、サバ 土 は8で行ってみることにした。



石灰の特徴

地中海沿岸の街並みでは、石灰で塗られた美しい白壁が連なっています。 これは天然の虫よけ、伝染病予防として、アルカリ性の石灰を使ったのが始まりと言われています。

ちなみにこの火山灰はベントナイト ともいい粘土の塊を砕いてふるいにかけているところ。無味無臭。体内に蓄積した金属などの有害物質を解毒してくれるんです。

ベントナイトの8つのポイント

1毒素を取り除く
2脂性肌やニキビ
3皮膚の解毒
4減量と便秘
5下痢の治療
6日焼け止め
7鉛や重金属の除去
8コレステロールを下げる

ベントナイトの命名はワイオミング州のフォートベントンにちなんで名付けられた


火山灰の特徴

アレルギーの原因にもなるというホルムアルデヒドを吸収・分解するほか、調湿性、消臭性、抗菌性など、高い機能性を持っています。








7/06/2023

古代コンクリートと『長七たたき』

土間はやはり粘土では亀裂が入りやすい。かといって砂を増して『たたき』風にする当初の案もあったが、そうなるとほぼほぼコンクリートモルタル仕上げのような肌合いになる。

ちょうど適した塩梅を調整する手間を考えたら、『たたき』の主材料のサバ土(別名、山土・真砂土)を取り入れた方が考えることも無く早く済むのではないだろうか。

そう思って早速建材やでサバ土を注文することにした。


古代セメントを使った『たたき』
従来の『たたき』はコンクリートの1/15の圧縮強度だが、こちらはコンクリート並みの硬さになるのに加えて火山灰の持つ性質である湿度や電磁波を吸着する能力が高い。その点は珪藻土と共通した特徴を持っている。ゼオライトのように放射性物質を吸着する性質も高い。

これを施した土間でアーシングなどするとその違いが歴然とするだろう。

また従来の『たたき』は屋外だと雨に当たることで劣化が激しくなるが、当『たたき』はこれを解消するに違いない。またこれは関係ないかもしれないが、海水に漬かれば漬かるほどに長寿命になっていく、不思議な性質をもっている。

あえて難点と言えば、従来のコンクリートのようにすぐ固まらない。要するに次の工事や施工に早く取り掛かれない。なので今のような効率と経済重視の市場では成り立たない。


このコンクリートに匹敵する硬さの『たたき』で思い出すのが『長七たたき』である。

明治時代に活躍した服部長七が考案した『たたき』のことで、日本各地の港湾堤防工事などで使われてきた。

『長七たたき』が発明されたのは明治9年(1876)。

水中でも固まる人造石の特性から、海岸や河川の堤防工事に使用されてきました。

しかし、セメントが日本でも普及するに従がって需要が縮小していき、その内世の中から忘れ去られてしまったのである。


また長七は『人造石』を発明したことでも有名だ。

『人造石』とは、『長七たたき』の技術を、大規模な土木工事等に改良したものであると言われている。その核心となる材料には共通するものがあるだろう。

長七について調べると、その調合方法について不明瞭に書かれているものが多い、私の経験と知識から判断して正確ではなく、核心が別のものにすり変わっているのが見てとれた。

単に普通の『たたき』の材料を調合したものとして語られているが、それでは出来ない。

また(株)INAX基礎研所のX線回折で検出された材料で実験してみたが出来なかった。

おそらく本当のことを隠しているのかもしれない。そう勘繰りたくなるのは熟練の左官職人なら経験から矛盾していることが分かるはずだからである。

このあたり本当のことを公表すると先ず左官職人が試してみて実証し、それを横目に産業化に乗り出す輩が必ず出てきてしまう。

こうして勘繰れば、セメント業界からの圧力を避けるためにとった処置かもしれない。
あるいは単に化学変化が進んで元の材料が検出できなかったかもしれない。
 

だが以下の文献におそらく正しいことが記されている。 ここでは単に石灰と記されているが、間違っても消石灰ではなく生石灰の方であろう。

たたき材料の配合比率については残っている記録が極めて少ないが,各種の史料・文献からつぎのような重量比の例を拾うことができる。

 

○宇品築港工事(明治17~22年)    石灰18%,種土82% 

 

○神野新田干拓工事(明治26~28年)  石灰約30%,種土約70% 

 

○明治用水頭首工工事(明治34年)   石灰1 対 種土10

 

○名古屋港管理組合による配合例    石灰1 対 種土10~12

 

 

以上の例における種土には,すべてマサが用いられている。人造石の技法が安定してきた明治後期には石灰とマサの配合比率はほぽ1対10のあたりに落着いていることが読みとれるだろう。 入造石の施工に当たっては,原土の選定と精選(粒度調整など)、石灰との配合比率と混合(空練り)。加える水の量と練り合わせなど多くの留意点があるが、最も重要なコツは練り土の打ち込みにあった。練り土を少しずつ足しては締め木でたたき締め,さらに木蛸 つきぼうや椙棒で打ち締めることを繰り返して,総体的によく圧縮した。この打ち込みの入念さは,伝統的なたたきの経験に基づいているのだが,きわめて日本的な特徴を感じさせるものであり,当然ながら多くの人手を必要とした。 このように人手のかかることがやがてコンクリートに押されていく1つの理由にもなった。最近になって,たたきを復元しようとする試みが見られるが、その最大のネックもこの人海戦術にあるようだ。
参考文献:伝統の天然セメント”たたき” 


長七はその材料や配合方法を何度も繰り返した末に編み出したようだ。

当時それを『人造石』で商標登録していたが、なぜか技術特許を申請していない。他に彼は別件で2件の特許を取得しているにも関わらず。

この『人造石』に関してだけ申請しなかった理由は、申請する前に博覧会場で現物を展示していたからかもしれない。あるいは公開するとまずいことに技術を盗まれるだけではなく、使われないでこの世から抹消されることを知っていたかあるいは知らされたからかもしれない。



それで秘伝として愛弟子のみにノウハウを伝えたのだろう。服部長七(服部組)は人造石を独占的に施行し、工法は漏れないようにした。


 


人造石工法は明治10年代から30年代にかけ、鉄筋コンクリート工法が普及する過渡期において、全国各地の築港、干拓堤防などの土木工事に採用された。とくにこの時代には独占的にというほど多くの人造石工事が服部長七(服部組)によって行われた。明治30年ころには全国に数十カ所の支店を持っていたほどだ。

 参照 服部長七と愛知の人造石遺構

これは後々のセメント産業を発展させていく財閥にとっては 脅威だったに違いない。


「長七たたき」(人造石)の技術は生きていた。

カンボジアの世界遺産・アンコール遺跡のバイヨン寺院。その北経蔵の修復が、ユネスコの日本国政府アンコール遺跡救済チームにより、平成11年(1999)9月に完了しました。

このバイヨン寺院北経蔵の基壇修復を可能にしたのが、明治時代に発明された「長七たたき」(人造石)の技術です。 化学的な物資は一切使えないため環境を損なうことなく、尚かつ、従来の工法の約30倍の強度を持つ「長七たたき」。明治時代の技術が、世界遺産を後生に残すために活かされました。この先見の技術の発明者こそ、岩津天満宮・中興の祖、服部長七翁です。
参照:明治時代の技術が活かされた世界遺産・アンコール遺跡の修復

 







7/04/2023

古代コンクリートたたきⅡ

2層目に入る

細めの砕石に砂・粘土を混ぜて 骨材としてみたが、まだ粘りが強くて乾いてくると亀裂が入ってくる。
かといって粘土なしだと、もろ土間コンクリート感丸出しであの『たたき』のような 肌触りの良い柔らかい感じが出ない。

何かが足りないと直感で感じ 立ち止る。
砕石でも砂でも粘土でもない その中間あたりの粒子が必要だと気づいた。
それは 『たたき』に使う主原料の真砂土で、粘着性がなく バサバサとして粒子が粘土や砂より大きく5ミリ前後の土と砂で、 早く言えば有機質を含まない山から取ってきた土である。
一般の建材屋ではサバ土 もしくは 山土 と言われて販売されているものである。