ユークリッド幾何学で点は限りなく小さくても存在するものと仮定し、その上で線や面・立体を形成し、まるでバベルの塔を構築するかの如く不滅の理論が積み重なっていました。
その歴史は約2千年も続いてきているので絶対と信じられてきたました。
ところが、約2百年前その常識が覆されました。いくつかの矛盾点が発見され、理論上破綻していることが発覚したのです。かつては神の領域にまで達しているとされた巨塔が、実は雲の上で建設が止まっており、そこから先はどれだけ積み上げようとしても崩れ落ちるばかりだったのです。
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| タロットカードの「16番:塔(The Tower)」は、崩れ落ちる塔を描いた、突然の崩壊、価値観の激変、そして目覚めを象徴するカードです。ショッキングな出来事を暗示しますが、それは新しい創造のための「破壊と再構築」というプロセスでもあります。 |
先の矛盾点はその後、曲がった空間(球面上や鞍型)における図形の性質を論理的に記述し、非ユークリッド幾何学と呼ばれるようになりました。
その内の球面幾何学と呼ばれる、現代ならば一般人でも分かる簡単な例を示してみましょう。
それが前章で取り挙げた核心となる『点』なのです。
従来の幾何学では、『点』は存在するものと絶対視してますが、その背景には古代ギリシャ哲学が「有(存在)」を世界の根源とし、それに反する「無」を論理的な矛盾や思考不可能なものとして徹底的に排除したためです。
従って、西洋思想史の全体に渡って、無が主要なテーマとして強く意識されたことはほとんどありませんでした。
このような思想形式からは無いことよりも有ることに重点が置かれることは自然の進展です。それが物質的な価値を重視する意識を促し、ひいては物質至上主義を生み出したのでしょう。
●三十本の輻(や=スポーク)がひとつの轂(こしき=車輪の中心で軸を受ける部分)に集まるが、その中心の何もない穴(車軸を通す部分)があるからこそ、車輪としての働き(用)をなすのである。
●壁は部屋を作り上げ、支えるが、その間の空間が最も重要である。
●壺は粘土で形造られるが、その中に形成される空間が最も有用である。
●それゆえに形あるものが役に立つのは、何もない無の部分が役割を果たすからである。
●行動とは、無が何かに影響した結果である。
精神の無があらゆる形の源であるのと同じように。
『道徳経』第11章より抜粋
『老子』第11章に登場する「車輪」・「壁」・「壺」関する有名な一節は、「目に見えない空虚な空間こそが、実質的な機能(用)を生み出す」という「無用の用」の思想を説いています。
さらに目に見える形を作る、その「源」についても語っています。
行動とは、目に見えない無形の精神的な領域(意志、思考、潜在意識)が、目に見える現実や他者に何らかの影響を与えて生じる現象です。この原理は、宇宙のあらゆる物理的現象や事象が「純粋な可能性(無)」から形を成していく過程と本質的に同じものです。
次章では、従来の幾何学における『点』をどのように『無』へと転換していくか、その際に組み込む新たなルールについて具体的に述べていきたいと思います。


