8/06/2026

テンセグリティの構造原理  第六章 正多面体から正多軸体(polyaxial structures)へ

では、プラトン立体を量子幾何学によって構造転換していきましょう。

ここからは幾何学的構造を扱うの段階に入るので、プラトン立体も幾何学用語である正多面体と呼んで進めましょう。

量子幾何学には先に挙げた五つルールがあります。
その中で構造を構築するために必要なルールは、『虚空間』の概念を除いた以下の3つです。

1.クオークをこの幾何学の構成要素とし、線状もしくは軸状に認識したものを、クオーク線またはクオーク軸と呼ぶ。線が太くなって立体状に変容するならば、それをクオーク体と呼ぶ。

2.クオークが交差する箇所ではクオークが互いに交わって一体となることはない。また、クオークの交差は最少3本で構成する。

3.各クオークの構成は、必ず互い違いに交差する格子構造を形成し、互いに引き寄せ合う。

 

以上のルールにのっとって、初歩的な段階から取り掛かってみましょう。

正多面体中、もっとも面数の少ない正四面体を用います。
正四面体を構成する正三角形の面は4枚あります。正三角形の辺は3本ありますが、各辺は他の同様の三角形の辺と共有し、全部で6本です(図7上部)。
この辺をクオーク線とみなし、それぞれの辺が交わることなく交差し、かつ交差の規則性は互い違いに組み合うように構成します。線にすると交差する箇所が点に見えてしまうので、太くした軸とい言える状態を(図7の下部)で示します。

図7

ルール2の規則性に従い、軸の交差部において二つの軸は、交わって一体とならず互いに引き寄せ合う関係となります。また、交差部における軸の上下関係は統一します。一か所でも上下関係が逆になっていれば引き寄せ合う力のバランスが崩れ、正常な三角形の格子を形成することができず、構造として成り立たなくなります。各軸は互い違いに網目のごとく交差し、軸の格子は三角形の『虚空間』を形成することになります。別の言い方をすれば、『虚空間』が形成されれば、そこに発生する『渦』が軸を引き寄せることになります。

なお、軸の交差部において上下の交差を逆にすることで、『虚空間』は右回りの流れと左回りの流れの二種類の『渦』をとらえることができます。どちらを選択しても構造上問題はありません。

ユークリッド幾何学では、多面体の各頂点で3本の稜線が交わると一つの点になりますが、量子力学では点が存在する代わりに『虚空間』が存在することになります。
図8は、正四面体の頂点に対応する軸の交差部を拡大したものです。そこには小さな三角形の『虚空間』が形成されているのが見えます。

図8




ここでは多数の軸によって構成される構造を、視覚的に理解しやすいように交差部から外方の軸は省略し切断した状態で示しています。

軸はクオークの流れを構造用に転化したものですが、量子世界の観点に立てば、この流れは円環状に循環した方がよりふさわしいでしょう。
その観点で正四面体上の構造を組み立てるのならば、図9で示す6個の円環が互い違いに組み合って織り成すリングユニット※1が構造上可能となります。

図9
円環を互い違いに組んだクオークの流れを示すリングユニット


図10
図9の中心部を拡大した図


本来クオークの流れは円環ですが、図10で示すようにクオークが織りなす中心部を抽出し格子構造として技術転用するため、中心部の流れを直線軸とみなしました。

この直線というみなし感覚は、水平線に例えて言うことが出来ます。
水平線は目の前では直線に広がって見えます。しかし、実態としてそれは一部であり、全体としてはつながって円環となっています。

今後このような直線軸で構成された多面体対応の軸組み構造を『多軸体』(Polyaxsial structures)と呼ぶことにします。正多面体に対応する場合『正多軸体』(Regular Polyaxial Structures)となります。

次に、残る4っの正多面体を多軸体に変換していきましょう。
正四面体同様に、各立体の稜線を軸に置き換え、軸の交差は互い違いにするルールに従って構成していきます。
視覚的に、軸が細く線状になるほど面の構成に近づいて見えるので、軸の交差が明確になる程度に軸の太さを調整した状態を次の図12で示します。

正6面体に対応する多軸体を正6多軸体と呼びましょう。
面体の頂点に対応するのが4っの軸が交差する箇所ですが、ここには三角形の『虚空間』が生じています。
同様に正8面体対応の正8軸体のそこには四角形の『虚空間』が生じ、正12面体に対応する正12軸体のそこには三角の、そして正20面体に対応する正20軸体のそこには五角形の『虚空間』が生じています。


図12


それらが生じる意味は、正多面体の面構成では気づくことが視覚的に困難な点を軸体が明確に答えてくれることにあります。
次章ではその点を具体的に見ていきましょう。


【補足説明】

※1現時点では、この正四面体を内包するリングのユニットは、トポロジー的にボロミアン環(ボロミアンかん、: Borromean ringsの仲間に分類される可能性があります。

このユニットの特徴は、リングを共有しながら次々と連結していくことで、理論上は無限に広がる「3次元のフラワー・オブ・ライフ」のネットワークを形成することが可能となります。平面の「フラワー・オブ・ライフ」

平面のフラワー・オブ・ライフ

は円が規則的に重なり合った図形ですが、これを3次元に拡張すると、球体が規則的に重なり合う構造(最密充填構造)になります。この球体の中心を結ぶと、「正四面体」と「正八面体」が隙間なく空間を埋め尽くす「オクタテトラ・トラス(八・四面体トラス)」と呼ばれる骨格が現れます。

また、このユニットが持つ「互い違いに交差して自立する」という性質は、以下の幾何学や構造力学の概念に非常に近いです。

  • 相互支持構造(Reciprocal Frame) それぞれの部材が互いに少しずつ支え合うことで、全体として安定する構造のことです。「ダ・ヴィンチの橋」などが有名ですが、このユニットは「リングを用いた立体的な相互支持構造」と言えます。

  • テンセグリティ(Tensegrity) 通常は「圧縮材(棒)」と「張力材(紐)」で構成されますが、互いが触れ合わずに空間に固定される不思議な構造です。このユニットのリングは紐を使っていませんが、「部材同士が互いの動きを制限し合って形を保つ」という点において、一種のテンセグリティ的な美しさを持っています。

  • ブルン絡み目(Brunnian link) 結び目理論における概念です。ボロメオの輪は「3つの輪のうち1つを外すと、残り2つもバラバラになる」という性質を持ちますが、このように「一部を外すと全体がほどける絡み目」の総称をブルン絡み目と呼びます。


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