6/21/2026

テンセグリティーの構造原理と形成方法 はじめに、目次

はじめに

テンセグリティという不思議な構造は、20世紀半ばに彫刻家のケネス・スネルソンが発見し、作品化したことに始まります。しかしほぼ同時期に、建築家のバックミンスター・フラーがそれを自らの発明として特許申請したため、当時はどちらが真の発明者かを巡って物議を醸した経緯もあります。

20世紀末、私はジオデシックドームの研究を通じて球面幾何学を学んでいましたが、当時テンセグリティにはさほど強い関心を持っていませんでした。その理由は主に2つあります。

1つ目は、スネルソンの作品群を見る限り、幾何学的に統制されたシステムに基づいているようには思えなかった点(彼がどのように設計したかは不明ですが)。2つ目は、フラーの特許文献にある構造も、単に多面体を分割して球面に転写したものであり、当時の私の研究対象であった幾何学システムからは外れていた点です。

転機は21世紀初頭に訪れました。繊維の織り構造に関する幾何学システムを構築し、「多軸体の多次元構造」を発見する過程で、そのシステムの中からテンセグリティ構造を抽出できることに気づいたのです。 このシステムに従えば、従来の「任意に部材を繋ぐ」「単一の球体状に組む」といったテンセグリティとは一線を画し、幾何学的に統制された設計が容易になるだけでなく、形態の自由度を劇的に高められることが判明しました。

しかし、長年にわたり私がこのシステムを公表してこなかったのは、構造美以外の実用性に乏しいと感じていたからです。特に建築への応用に関しては、いくら「反重力構造」と称されようとも、地上という重力の束縛から逃れるのは容易ではないと考えていました。

それでも今回、本システムの公表に至ったのにはいくつかの理由があります。

1つは、次世代の幾何学構造の発展に貢献したいという思いです。この技術が地上だけでなく、将来的に無重力空間で応用されることを期待しています。また、医学分野においてテンセグリティが人体や生命体の柔軟な構造に類似していると言われるように、私には想像もつかない領域で活かされる可能性にも大きな期待を寄せています。

そしてもう1つは私個人の目的です。主要研究である繊維構造の幾何学——すなわち『多次元多軸体構造の幾何学システム』の書籍化を見据え、その前段階として、本システムに含まれるテンセグリティの項目を文書化しておきたいと考えたためです。

本書のタイトルは『テンセグリティの形成原理と形成方法』としました。中学生程度の知識と読解力があれば誰でも理解できるよう平易にまとめ、さらに「自分で作ってみたい」という方の実践本としても活用できるよう、具体的な作例と制作手順を添えています。

以下に、全体の構成を目次としてまとめました。



タイトル

テンセグリティの構造原理と形成方法

はじめに

目次

テンセグリティの構造原理

  1. ユークリッド幾何学の限界
  2. 有から無へ
  3. 量子幾何学(虚空の幾何学)
  4. 古代文様に見られる虚空間
  5. 神聖幾何学におけるプラトン立体
  6. 正多面体から正多軸体(Reguler polyaxial structures)へ
  7. 正多軸体(Reguler polyaxial structures)の変容
  8. 多軸体の多次元構造
  9. 多次元構造の核となる形態
  10. 結晶構造を想起するゾーン多面体
  11. ゾーン多面体とゾーン幾何学
  12. ゾーン多面体と多軸体とを融合する
  13. 多軸体の各軸をテンセグリティの圧縮材並びに張力材の通る空間として捉える
  14. 核となるゾーン多面の多様性がテンセグリティに形態の自由度を与える

テンセグリティの形成方法(ゾーン12面体を核とする例を用いて)

  1. ゾーン多面体を核とする
  2. ゾーン多面体を形成する座標軸を確認
  3. 各座用軸に対応するゾーンを確認
  4. ゾーンの断面図を作成
  5. 断面図内にテンセグリティの構造を形成する空間を作図
  6. 空間内に圧縮材並びに張力材が位置する箇所を作図
  7. 作成した図面に基づき圧縮材並びに張力材を制作
  8. 両者をつなぎ合わせて組み立てることでテンセグリティを形成

実践例

  1. ゾーン6面体を核模型としたテンセグリティ
  2. ゾーン30面体を核模型としたテンセグリティ
  3. ゾーン90面体を核模型としたテンセグリティ

目次

前編:テンセグリティの構造原理

  1. ユークリッド幾何学の限界

  2. 有から無へ

  3. 量子幾何学(虚空の幾何学)

  4. 古代文様に見られる虚空間

  5. 神聖幾何学におけるプラトン立体

  6. 正多面体から正多軸体(Regular polyaxial structures)へ

  7. 正多軸体の変容

  8. 多軸体の多次元構造

  9. 多次元構造の核となる形態

  10. 結晶構造を想起させるゾーン多面体

  11. ゾーン多面体とゾーン幾何学

  12. ゾーン多面体と多軸体の融合

  13. 多軸体の各軸を圧縮材・張力材の空間軸として捉える

  14. ゾーン多面体の多様性が与える形態の自由度

後編1部:テンセグリティの形成方法(ゾーン12面体を核とする例)

  1. ゾーン多面体を核に設定する

  2. 形成に必要な座標軸の確認

  3. 各座標軸に対応するゾーンの確認

  4. ゾーンの断面図を作成する

  5. 断面図内にテンセグリティ構造の形成空間を作図する

  6. 空間内に圧縮材および張力材の配置を作図する

  7. 図面に基づき圧縮材・張力材を製作する

  8. 各部材を連結・組み立ててテンセグリティを形成する

後編2部:実践例

  1. ゾーン6面体を核模型としたテンセグリティ

  2. ゾーン30面体を核模型としたテンセグリティ

  3. ゾーン90面体を核模型としたテンセグリティ


※画像は2002年8月27日、豊橋市伊古部海岸の野外美術展にて展示したテンセグリティ作品。