前世紀後半には体系化されましたが、それ以前は断片的に研究されたり、取り上げられたり、応用されていたりしました。ジオデシック幾何に関心のある方でも、なかなかゾーム(Zome)との関係にまで入っていく方は極めてまれかもしれません。
このゾームを開発したSteve Baer(ステーブ・ベイヤー)はゾーンの重要性にいち早く気付いた方です。これは人為的にシステム化されているというよりは、むしろ自然法則の一部を人間が見つけたといってよいかと思います。システムから導かれる形態のは多様性に富、ジオデシックとは比べることができません。両者はまったく異なる発想です。
しかし、今回の多軸体の試作には両者のシステムを融合して用いることにしました。
そもそもゾーン多面体は正確には球に内接や外接していません。その外殻はなんとなく球形ですが、若干凸凹となっています。
構成面数が多くなればそれだけ球に接して形態を形成しえますが、今回比較的少ない面数で構成するゾーン多面体を選びました。要するに面数に対応して軸数も同様に決まるためです。
軸数90本程度で構成する多軸体は、ゾーン多面体を核にして設計すると外殻が凸凹になってしまうと同時に多角形の構成で空間の格差が大きくなります(図を参照)。
これをデザインに応用する場合その目的にもよります。
今回はコネクタなしで安価に仕上げる予定です。それから目的として、格子(グリット)の大きさをそろえ、特に六角形のグリットを大きくしたいのです。意匠的に球形にして滑らかな輪郭にしたいと思っているのです。
そのため幾何学的な解析をかなり試さねばなりません。
幾何解析の手順は大変長いストーリーになり、設計者の私でもほとんど退屈になるのでここでは省きます。
短く端的に言うと、ゾーン多面体を球に内接させます。すると平面では当然成り立たない角度が出てきますが、これが後々軸が傾斜して交差する角度を生みます。
球に内接する度合いは無限にあり、具体的に上の図で示すと、五角形をなす五つ菱形の内角の総和が限りなく360度になる設定も可能です。この操作によって軸の太さや長さを自由に設定することが可能となるのです。
実際の試作をこれから画像で示していきましょう。
以下の三つ多軸体は前述の幾何解析によって設計したものです。
軸を延長させて自立できるようにしてあります。それぞれ位置が異なっており、色々試行錯誤して目的に合う位置を検討している様子です。
軸が非対称となっています。 |
目的とする構成にいまひとつ追いついていない。 |
結局、グリットと軸関係、支持軸の構成など気に入らない点が多かったため、この設定はやめ、新たな設定を試みることにしました。